『ゲド戦記 Ⅳ』ー帰還ー Tehanu から学ぶ

(4)原題 Tehanu(1990)

ゲド戦記 4 帰還 (ソフトカバー版)

アーシュラ・K. ル・グウィン,Ursula K. Le Guin/岩波書店

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ページをめくると、先ず


ことばは沈黙に
光は闇に
生は死の中にこそあるものなれ
飛翔せるタカの
虚空にこそ輝ける如くに

―― 『エアの創造』 ――



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ゴンド島の地図



前作Ⅲ(原語版1972年)を三部作として書き終えて、18年も経って描かれた本書ゲド戦記Ⅳ(原語版1990年)

原題が “Tehanu” となっているように、キーパーソンはテルー。彼女の姿が示す意味を考えるとそこにグウィンさんのメッセージがある。

虐待、性的差別、抑圧、無力なものへの支配であり、テルーの心の傷を表面に表わす意味でもあったのではと思う。

しかし、そのテルーだからこそ、真実が観え、観じることができるということが様々な場面にちりばめられている。





(ゲド戦記Ⅲ)さいはての島から最古参の竜カレシンに乗ってアレンと共にロークへ戻ってきたゲド。

そして、ゲドは故郷へ帰るために皆と別れまたカレシンの背に乗って飛び立った。その後の話ではあるのだけれども

ハーブナーに降り立った(ゲド戦記Ⅰ)のその後のテナーの現在の様子が描かれる第一章『できごと』から始まります。

ここで、これからの主要な登場人物のこれまでが紹介されている。



テナーは、オジオンのところで過ごし大巫女 “アルハ” ではなく “テナー” として生き、オジオンの元を去りひとりの女として生きることを選択し農夫ヒウチイシの妻 “ゴハ” となり、それから後家となっていた。

父からの虐待の末、たき火に放られ右半身を焼いた少女をひきとったいきさつや状況が把握できる。


第二章『ハヤブサの巣へ』第三章『オジオン』で、オジオンの最期と邪な魔法使いの野望のようなものがうかがい知れる。

第四章『カレシン』で、ローク島をカレシンの背に乗って旅立ったゲドがゴンド島に・・・変わり果てた姿で。




ネタバレになりますが^^;

山羊飼いとして過ごした期間はゲドにとって必要で必然な展開であったこと。

テルーがテナーに引き取られたことは、テナーにとって必要で必然な展開であったこと。

テルーがテナーのネイティブカリズム語で “炎” の意味する名である “テルー”と名づけられたこと。

生と死、光と闇、善と悪・・・ 相対するものは表裏一体であること。

ほんとうの自由とは・・・

心のうちから湧き起こる感情、それによって起こる行動は、その者の為すべき真の行為であること。



副題を “帰還” としているところには、読む前まではゲドが故郷ゴンド島に帰ってきたという意味なのかと思っていたが、ゲドが魔法使いとなる前の幼き頃の原点に帰るという意味であり、ゴハが大巫女アルハとして居たあの迷路で出会いお互いを信頼し知恵と魔法と行動力で脱出したことが重なるようなストーリーを意味するなかなぁと思いました。



例えば、テルーが心を開き触れ合うことを許したのは誰?
見るからに(読んでだけどね)人が嫌うだろうと思われる人物は果たしてどんな人だったのでしょう?

書き切れないほど伝えたい思いのシーンがたくさんあるけど
それは無理!(笑)なこと。
手にとって読んでみてね♪



なぜだか、このシーンが好き。

「あたしね、『天地創造』のいっとうはじめのとこ、知ってるよ。」テルーはゲドに話した。
「うたってくれないか、このわたしに。」とゲドはそう言って、またしてもテナーに目で許可を得てから、暖炉のそばの自分の席に腰をおろした。
「あたしは、うたわない。ただ、語るしかできないの。」
ゲドはうなずいて、待った。顔つきは真剣そのものだった。子どもはそらで語りはじめた。


造ることとこわすこと
始まるものと終わるもの
誰に見分けのつくものぞ
われらが知るは戸口のみ
入りて発つべき戸口のみ
戻りし者のその中の
最年長はセゴイとて
門の守りに立ちおりし


子どもの声は金属板に金属ブラシをかけたようだった。かわいた葉のこすれあう音のようでもあり、火がシューシュー燃えるときの音にも似ていた。テルーはついに第一節の終わりまでいった。

かくて泡立つ波間より
エア輝きて生まれけり


その後、おのおのの為すべき事を終えゲドがこう言った。


「覚えただけもう一度『天地創造』を語ってみてくれないかな。」暖炉の傍らにすわって、ゲドがテルーに言った。
「そしたら、そこからあとをいっしょにつづけよう。」
テルーは第二節を一度はゲドと語り、一度はテナーと語って、三度目はひとりで語った。





最終章、“テハヌー” はテルーの真の名前


カレシンがやって来た。テルーによばれて・・・


これまで描かれたシーンのひとつひとつに、暗く思い鬱積するような感情に覆われていた心が、明るい光をあびて晴れていくような感覚を感じた。


力強く天性の姿がみえてきたテルーとゲドとテナーの三人の物語が始まっていくようです。



全6巻、4巻目。何度も読み返したりで、読み終えるまで時間がかかったけど言葉にならないものが胸の奥に残る。
三部作となるⅠ・Ⅱ・Ⅲとは趣が違うストーリーだけど、ひとりの人間のなかに秘められているものを触発する、語られる言葉であったり、文脈から伝わる響きだったり・・・は、一貫して同じだと思います。
時には児童文学としてどうなのかな?とも思える表現があったりするけど
テルーの成長のように時が経ち辛苦を経験したとき甦ってくるのかもしれないですね。


次はグウィンさんの思いの通りに、『ゲド戦記外伝』を読む事にします♪







✿✿✿

ご訪問くださりありがとうございます ♪

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<(_ _ )>



*****


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by sakura8sakura | 2017-07-19 05:15 | 読書

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