宮沢賢治『土神と狐』から学んだこと


土神と狐 (日本の童話名作選)

宮沢 賢治/偕成社

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作:宮沢賢治  絵:中村道雄

樺の木と土神と狐 彼らの心の動きを絶妙に描いている。

すべては自分の主観でものを見ているということ。
そして、人間の中にある「畜生の生命」「修羅の生命」「地獄の生命」「慈悲の心」を。


樺の木:綺麗でやさしそうな女性(木)なんですけどね^^ みんなに愛される存在。

土神:見た目はぼろぼろで、まぁ汚らしい風体といえばいいでしょうか。でも、建前や体裁の考えなく正直なので、他者に不安や恐怖を与えている。

狐:身なりもキチンとして、見た目は上品な風で言葉も丁寧で滅多に他者に不快な思いをさせないが、少々見栄っ張りで不正直者。


夏の初めの夜、樺の木と狐が満点の夜空をみて星の話をしている場面は、とても綺麗な風景が目に浮かびます。
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「惑星というのはですね。自分で光らないやつなんです。お日さまなんかは勿論恒星ですね。あんなに大きくてまぶしいんですが、もし途方もない遠くから見たら、やっぱり小さな星に見えるんでしょうね」

見る立ち位置が変れば見え方が違う。あんな大きな太陽だって小さく見えるんだよ。まして、星ってイメージないけどね。って言ってませんか?( ^ω^ )
要するに、みんな自分の主観でしか物事を見ていないんだよ。自分のなかにあるイメージで判断しているんだってことを賢治は伝えているように思った。



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「わしわね、どうも考えてみると、わからんことが沢山ある、なかなかわからんことが多いもんだね。」
と話す土神に、昨夜、狐とお星さまのお話をしていた樺の木は、「狐さんにでも聞いてみたらいかがでしょう。」と、つい言ってしまった。この言葉を聞いた土神は烈火のごとく瞋り出す。
 その様子を見た樺の木は、土神のお祭りの話題に変えたんだけど「人間どもは不届きだ。近頃は、わしの祭りにも供物一つ持って来ん――」と、きりきり歯噛みして怒る。


土神の主観であり、不信・疑心・思い込み・劣等感


「畜生の心は弱きをおどし強きをおそる」
木こりに対してとった土神の行為は畜生界の心
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木こりは、谷地から抜け出そうにも同じ処を回っているばかりで抜け出せない。しまいには疲れて水の中に倒れてしまう。

そこで、土神は乱暴ではあるが木こりを草原に投げ出す。畜生の心にも菩薩の心があったのだ。

たまらなそうに両手で髪を掻きむしる土神。苦悩しているようだ。

自分の心をもてあますように、悪いのあの狐のせいだ!と独り嗔り愚痴りまくる。嗔るは地獄ですね。
そして、狐に嫉妬する修羅界
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この土神の中にある自分を自分でどうにも変えられない弱さと苦悩。どんどん生命が重く沈んでいく境涯まさに地に沈む地獄界。
狐に嫉妬する炎に苦しみ、その苦しみをもたらしたものへの「瞋り」
決して、自分自身にその原因があるとはとらえられない。そうとらえるだけの生命力がない。ゆえに、他を恨み、他に「瞋る」
また、苦しみをどうにもできない自分自身にも「瞋り」の炎が向けられることもある。その場合も、自分で不幸の責任を引き受け、変えていこうという強さではなく、無力な自分へのやり場のない恨みであり「うめき」なのです。
まさに「不自由」そのもの――獄に囚われた境涯。

※法華経の智慧(中)十界論の講義を参考にさせていただきました。



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 「天道というものはありがたいもんだ。春は赤く、夏は白く、秋は黄いろく、秋が黄いろになると葡萄は紫になる。実にありがたいもんだ。」

 「わしはな、今日は大へん気ぶんがいいんだ。今年の夏から実にいろいろつらい目にあったのだが、やっと今朝から、にわかに心持が軽くなった。
 「わしはいまなら誰のためにでも命をやる。みみずが死ななけぁならんなら、それにもわしはかわってやっていいのだ」土神は遠くの青いそらを見て言いました。その眼も黒く立派でした。

貪瞋痴の心から平穏な心になった土神は、みみずにも慈悲をかける優しさを見せてくれる。トンボを見る土神の姿にホッとする。こんな一面も土神のなかにあるのです。

太陽は恒星!自分で光れ!!って言ってるよね!!! だからね!納得!!!
あっ、縁を生かして光れ!もありかな……
賢治さんいろんなところに掛けてくる。
あら、こんなところにも?キラッって見えたら嬉しい♪







そんな穏やかな心もちでいる土神を妬ましく思った狐は、また、自分をよく見せようとする虚言癖が顔を現す。そして、土神を無視するように挨拶もしないで立ち去ろうとする。

その態度(縁)に土神の心にまた怒りの炎が燃えあがってしまった。

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狐の巣穴のなかはがらんどうで、狐の所有していたものは望遠鏡もなければ何もなく、狐のレインコートのポケットの中に枯れたかもがやの穂が二本と樺の木に貸してあげたハイネの詩集しかなかったのです。

土神はなにに嫉妬していたのでしょうか?
綺麗な身なりの狐をみて土神は自分の思い込みの贅沢な暮らしに嫉妬したのでしょうか?
自分にないものへの嫉妬の心と劣等感が生んだ幻想
取り返しのつかないことをしてしまったと気が付いたときにはもう…
あまりにも悲しい結末。

これらの心の働きは誰のなかにもあり、縁によって湧きおこるものということを知っておくことは大事ですね。
作中、狐が持っていたハイネの詩集、少し調べてみたらこんな一節がありました。

人間を照らす唯一のランプは理性であり、生の闇路を導く唯一本の杖は良心である。
ハイネ 「ドイツの宗教と哲学」



宮沢賢治の自然を表現する文章は、情緒的で趣があって季節の風の音や香りまで感じさせてくれます。
樺の木の星を見るキラキラした様子や恐怖にふるえる姿、困惑の影を落とす。

中村道雄さんの「組き木絵」それぞれの木の素材を生かして絵として組み込んでいる。
木のもつ風合いが、ぬくもりと優しさを伝えてくれる。これはもう、アートですね!

お話も絵もとても素敵な絵本でした♪





✿✿✿

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<(_ _ )>



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by sakura8sakura | 2017-10-11 01:23 | 読書

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